2022/05/09 19:15

こんにちは。
石のシンシア、制作担当のメイソンです。

上画像の石、これがビアンコカララです。
イタリア産の白い大理石で、
マーブル模様といえばコレ、という人も多いでしょう。
他にも白い大理石は沢山あるのですが、
やっぱりこれが一番。
しっとりとした艶、高級感のある柄、
グレーっぽいような、青っぽいような美しい白。
他の白い大理石って、少し赤っぽいクリーム色だったり、
キラキラひかる粒が逆に安っぽかったりで、イマイチなんです。
ビアンコカララは、加工しても仕上がりが美しく満足感が違います。

加工といえば、古くはミケランジェロのダビデ像

これもビアンコカララでできています。
まあ、ミケランジェロですから・・・
大迫力、まるで生きているようですが、
御影石ではこの質感は出なかったことでしょう。


ところで、下の画像は御影石です。

「できいるだけビアンコカララに近い白い御影石を」
ってことで準備したんですが、
御影石はどうしてもこういう感じに
賑やかな柄なんです。これでも、かなり白い御影石です。

昔、もっと白い御影石があったんですが、
石質が今ひとつで、時間が経つと内部に潜んでいる鉄分が滲んできて、
オレンジ色に変色することがあって、
最近では全く見かけなくなりました。

個人的には圧倒的にビアンコカララの方が好きなんですが、
実は、日本人に人気が高いのは御影石の方なんです。
何故かというと、大理石は紫外線や酸性雨に弱いので、
経年劣化が現れやすくて、磨いた艶がなくなってしまうんです。
最近の日本人は、経年変化とか味とか風情といったものを
あまり楽しめなくなっているような気がします。

大理石のお墓って、
海外では一般的なんですが、
日本ではほとんど見かけません。
外国の方の方が、経年変化におおらかなようです。

加工する側から見ると、御影石は硬くて脆い、
ガラスに近いような感じです。
大理石はしっとりと柔らかく、暖かみを感じる石質です。

御影石は屋外に放置しても艶が長持ち。
数十年経っても鏡のように艶がある物もあります。

対して、大理石は酸に弱く、
条件が悪ければ、数ヶ月で磨きの艶がなくなってしまいます。
大理石のお風呂や台所のメンテナンスが大変なのは、
大理石が酸に弱く、風化、劣化が進むの早いためです。
それでも、やっぱり大理石は魅力的ですから、
セレブの定番になるのも頷けます。


(上画像は大理石にレーザー彫刻したものです。
日光東照宮へ家族旅行した時に撮った石灯籠の写真を彫刻しました)

ところで、さっき「最近の日本人は経年変化を楽しめない」
というようなことを書いたのには理由があります。
私の故郷は石材加工の盛んな町だったので、
「〇〇さんトコの息子は、△△さんに騙されて古い石灯籠を新しい石灯籠と交換したんだ」
というような笑い話がありました。
最近の若い人がコレを聞いても
「何がおかしいの?新しい石灯籠になって良かったんじゃないの?」と思うでしょう。
しかし、昔の日本人は古くなって苔の生えた石灯籠に価値を感じていたのです。
しかも圧倒的にです。
どうやったら苔が早く生えるのか?を研究したり、
作ったばかりの石灯籠は価値がないから、わざと苔の生えそうなところに
長い年月放置したりするのです。

という訳で、かつての日本人は
経年変化を積極的に楽しんでいたのです。

時代が変わって、そういった風情はなくなりました。
もはや、外国の方の方がワビサビを理解しているのかもしれません。

私は古いもの、好きです。